飲食業界は慢性的な人手不足に悩まされていますが、省力化投資で生産性向上を図ることができます。政府は2024年より、飲食業界の省力化を後押しする補助金制度を開始します。
本記事では、補助金の対象となる省力化設備を紹介します。また、補助金の概要や申請方法、導入事例などを解説します。
省力化投資で業務効率化を実現し、競争力強化につなげましょう。
省力化投資補助金の概要と活用方法
飲食業界は人手不足や業務の非効率化などの課題に直面しており、DXの推進による省力化が急務となっています。この状況を受け、2024年からは中小企業の省人化・省力化の取組みを支援する「省力化投資補助金」が始まります。
令和5年度補正予算案額は1,000億円と大規模なものとなっており、飲食業界にとって大きなチャンスと言えるでしょう。ここでは、省力化投資補助金の概要と活用方法について詳しく解説します。
補助対象となる飲食業者
省力化投資補助金の対象となるのは、中小企業基本法に定める中小企業者等で、飲食業を営む事業者です。具体的には、資本金又は出資総額が5億円以下の法人、常時使用する従業員の数が200人以下の法人又は個人が対象となります。
また、補助対象となる事業は、飲食業におけるDXの取組みに限定されます。経済産業省の定義によると、DXとは「デジタル技術を活用し、業務やサービスを変革し、企業価値を向上させる取り組み」を指します。つまり、単なるIT化ではなく、デジタル技術を活用して業務プロセスを抜本的に変革し、生産性向上や新たな価値創出を目指す取組みが補助対象となるのです。
最大1,500万円の補助と補助率
省力化投資補助金の補助上限額は1,500万円で、補助率は1/2となっています。つまり、3,000万円の設備投資を行えば、そのうちの1,500万円が補助金で賄われるということです。この補助率は、他の補助金と比べても非常に高い水準にあります。
ただし、補助対象となる経費には条件があります。具体的には、ハードウェア・ソフトウェア費、クラウド利用料、外注費などが対象となりますが、自社内で消費されるものや汎用品は対象外となっています。補助金を活用する際は、対象となる経費を正しく理解し、適切な設備投資計画を立てることが重要です。
省力化投資のメリットと留意点
省力化投資は、飲食業界における人手不足や業務効率化の課題解決に向けた重要な取り組みです。ここでは、省力化投資のメリットと留意点について詳しく解説します。
省力化投資のメリット
省力化投資の最大のメリットは、業務効率化と顧客満足度の向上です。モバイルオーダーシステムや配膳ロボットなどの導入により、注文受付や配膳などの繰り返し作業を自動化することができます。これにより、スタッフは顧客対応により多くの時間を割くことができ、より質の高いサービスを提供することが可能になります。
また、予約管理やキャッシュレス決済の導入により、顧客の利便性が向上し、満足度の向上にもつながります。顧客満足度の向上は、リピート率の向上や口コミによる新規顧客の獲得にも好影響を与えます。結果として、店舗の収益性の向上が期待できます。
省力化投資のもう一つの大きなメリットは、人件費の削減です。飲食業界は人手不足が深刻な課題となっており、人件費の高騰が経営を圧迫しています。省力化投資により、業務の自動化や効率化を図ることで、必要な人員数を削減することができます。
また、省力化投資は長期的な視点での経営効率化にも寄与します。人件費の削減により、利益率の改善や設備投資の余力が生まれ、店舗の競争力強化につながります。加えて、従業員の労働環境の改善にもつながり、離職率の低下や人材の定着にも好影響を与えます。結果として、持続可能な経営の実現が可能になります。
省力化投資をしていく上での留意点
省力化投資をする前に考慮しなければならない点として、初期投資コストの高さが挙げられます。モバイルオーダーシステムや配膳ロボットなどの導入には、一定の設備投資が必要です。特に、中小規模の飲食店にとっては、初期投資の負担が大きな課題となる可能性があります。
また、省力化投資により導入された新しいシステムやテクノロジーに対応するためには、従業員のスキル習得が必要です。操作方法やトラブル対応などについての教育・トレーニングが必要となり、一時的な業務効率の低下や、従業員の抵抗感なども考えられます。ただし、これらは、ここで紹介する補助金の活用や計画的な導入、丁寧な従業員教育などにより、軽減することが可能です。
省力化投資補助金活用のポイント
省力化投資補助金は、飲食業のDX化を推進し、省人化・省力化を実現するための強力な後押しとなります。ここでは、補助金活用のポイントについて解説します。
自社のDX化推進と課題解決の明確化
省力化投資補助金を活用するには、まず自社のDX化推進の方向性と解決すべき課題を明確にすることが重要です。飲食業界では人手不足や業務効率化が大きな課題となっており、それらを解決するためのデジタル技術の導入が求められています。
具体的には、モバイルオーダーシステムによる注文と会計の効率化、配膳ロボットによる料理提供の自動化、予約管理とキャッシュレス決済の導入などが挙げられます。これらの取り組みによって、スタッフの業務負担を軽減し、顧客対応により多くの時間を割くことが可能になります。
また、省力化投資補助金を活用することで、最大1,500万円の補助金を受けることができ、設備投資の負担を大幅に軽減できます。補助率は1/2となっており、DX化推進のための強力な後押しとなるでしょう。
補助金申請に必要な書類と手続き
省力化投資補助金の申請には、一定の書類と手続きが必要となります。まず、自社の事業内容や課題、DX化推進の方向性を明確にした上で、補助金の申請書を作成する必要があります。申請書には、導入する設備やシステムの詳細、それによって期待される効果、投資予定額などを記載します。
また、申請にあたっては、見積書や図面、導入スケジュールなどの添付資料も必要となります。これらの書類を揃えた上で、所定の期日までに申請を行う必要があります。申請手続きには一定の時間と手間がかかるため、早めの準備と計画的な進行が重要です。
補助金を活用した設備投資計画の立案
省力化投資補助金を活用するには、補助金を前提とした設備投資計画の立案が不可欠です。まず、自社の課題や目標に合致した設備やシステムを選定し、その導入による効果を試算することが重要です。その上で、補助金の上限額や補助率を考慮しながら、最適な投資規模と内容を決定します。
また、設備投資計画の立案にあたっては、導入後の運用体制やランニングコストにも十分な注意を払う必要があります。せっかく補助金を活用して設備を導入しても、運用が上手くいかなければ効果は限定的なものになってしまいます。そのため、社内の体制整備や従業員教育なども併せて計画し、着実な成果につなげていくことが求められます。
飲食業の省力化に効果的なDX事例
ここでは具体的に飲食業の省力化に効果的なDX事例を4つ紹介します。
モバイルオーダーシステムによる注文と会計の効率化
モバイルオーダーシステムは、顧客がスマートフォンやタブレットから直接注文できるシステムです。注文データがキッチンに即座に送信されるため、スタッフが注文を取りに行く必要がなくなり、業務の効率化につながります。
さらに、会計も自動化されるため、レジ打ちにかかる時間を大幅に削減できます。この結果、人件費の削減と顧客対応の時間確保が可能になります。モバイルオーダーシステムの導入により、注文と会計の業務時間を最大50%削減できたという事例もあります。
配膳ロボットによるスタッフの業務負担軽減
配膳ロボットは、調理された料理を自動で配膳するシステムです。ロボットが料理を運ぶことで、スタッフは注文取りや顧客対応により多くの時間を割くことができます。配膳業務の自動化は、人手不足の解消にも役立ちます。
ある大手レストランチェーンでは、配膳ロボットの導入により、スタッフの歩行距離が1日あたり約1.5km削減され、生産性が約20%向上しました。配膳ロボットは、スタッフの身体的負担を軽減し、サービス品質の向上にも寄与すると期待されています。
スチームコンベクションオーブンによる調理業務の負担軽減
スチームコンベクションオーブンは、加熱時間や温度をプログラムできるため、経験の浅いスタッフでも高品質な調理が可能です。また、水蒸気を利用することで従来のオーブンよりも速く食材を調理できるため、調理時間の短縮と効率化が期待できます。
スチームコンベクションオーブンを導入すれば、少人数のスタッフでも多種類の料理を迅速に提供でき、顧客満足度を向上させることが可能です。
予約管理とキャッシュレス決済の導入
オンライン予約システムとキャッシュレス決済の導入は、顧客の利便性を高めるだけでなく、店舗運営の効率化にも貢献します。予約管理の自動化により、電話対応や手作業での予約管理にかかる時間を削減できます。
キャッシュレス決済の導入は、会計処理の時間短縮と現金管理のコスト削減につながります。ある飲食チェーンでは、キャッシュレス決済の導入で、会計にかかる時間が約30%短縮されました。予約管理とキャッシュレス決済のDX化は、業務の効率化と顧客満足度の向上を両立させる有効な手段と言えるでしょう。
まとめ
本記事では、2024年に始まる飲食業向けの省力化投資補助金について解説しました。配膳ロボットなどの導入で、人手不足や働き方改革に対応できます。
この補助金は、飲食業界の効率化と競争力強化に大きく貢献するでしょう。新しい省力化機器の導入により、使わなくなった厨房機器が出てしまったら、厨房ヒーローまでお問い合わせください。